『私』だけを見て欲しい
「拓斗さん…」

満足げに頷かれる。
やっぱりどっか子供っぽい。

「…あの…どうして急に泰に会おうと思ったんですか?」

運転する人の横顔を見た。
電車だと片道1時間近くかかる。
だから、車で行こう…と言ってくれた。

「泰は…貴方の子供じゃないから、心配してくれなくてもいいのに…」

多感な年頃。
急に母親の上司が遊びに来て、戸惑うに決まってる。

それを考えると迷う。
このまま、この人を家に入れてもいいのかどうか。

「…俺はお前のトモダチ」
「えっ…?」

ギョッとした。
信号で止まって、顔が振り向く。

「そういう事にしよう。今日の所は」
「トモダチ…?」

コイビトじゃなく⁉︎

「その方が受け入れてもらえるだろ⁉︎ 相手は中学生で、一番難しい年頃だ…」

自分の過去と重ねてる?
亡くなったご両親のこと。
ふと思い出した。

「顔見せ程度に遊んでやる。好きな事は何だ?」
「ゲ…ゲームですけど…」

朝から晩までやってても飽きないくらい好きだよね。

「ゲーム世代だからな。…他には?」
「他…⁉︎ え…と…」

泰の顔を思い浮かべながら、普段してることを思い出す。

「マンガ読んだり…そう言えば…YouTubeのオモシロ画像とか見てたけど…」
「どんなヤツだ?」
「えっ⁉︎ …そこまではちょっと…」

アダルト的なものじゃなければいいや…と知らん顔してた。
だから、聞かれても困る。
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