『私』だけを見て欲しい
泰はポカン…とした顔してた。
いきなり現れた人から

「男同士の話をしよう!」

…と言われて。


「…誰?こいつ?」
「え…あ…ト、トモダチ…」

言われた通りに紹介した。

…目が疑ってる。
そうだよね。誰が見てもトモダチには見えないもんね…。

「会社の上司で…山崎さんと言うの…泰に…会ってみたい…と言うから…」

お願いします。
後はなんとか助けて…!

ちらっと彼を拝む。
人の良さそうな顔して笑ってる。
コレ絶対、営業スマイルだ。

「初めまして。山崎拓斗です。ヨロシク!」

あえて握手は求めず。
握り返すかどうか、分からないから。

「…ふん!」
「泰…!」

我が子ながら情けない。
初めて会う人に挨拶もできないなんて。

(育て方、間違った…)

自信無くす。
この子を見てると、イヤでも自分の子供の頃を思い出す。

不愛想で無口で無関心。
親に干渉されるのがキライで、外で遊んでばっかいた。

「泰…きちんと挨拶して…!」

お願い。
これでも一応、会社の上司だから。


「…いいよ、結衣、別に…」

名前で呼び捨てた。
泰の顔が引きつる。

トモダチを呼び捨てにするのは当たり前。
でも、ここではマズい…。

「あ…あのね…この人、誰のことも皆呼び捨てで…」

ホントは紗世ちゃんだけだけど、この際、そういう事にしておかないと。

オロオロする私の反応楽しんでる。
とんでもないトモダチだ…。
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