『私』だけを見て欲しい
「俺、一人っ子でさ。ガキん頃、いつも兄弟がいればいいな…と思ってたんだ。だからお前の話聞いて、兄貴になってやろうと思って」
「兄貴…?」

迷惑そう。
兄貴と言うより、絶対お父さん世代だもん。

「…ふんっ!」

ああっ、またそんなリアクション…!

「……兄貴だって言うなら、ゲームでオレに勝ってみろよ!そしたら認めてやる!」
「えっ…⁉︎ 」

何、それ⁉︎

拓斗さんを振り向く。

してやったり…な顔してる。
こんなんでいいの⁉︎
これでトモダチ成立したの⁉︎

「よしっ、絶対に勝つ!ただし、ゲームはこっちに選ばせろ!」
「…しゃあねーな。いいよ、どれする⁉︎ 」

…ガチャガチャとソフト選び出す。
いつの間にか2人の世界。
私はいてもいなくてもいいみたい。


「…お母さんもやる?」

明るい声で泰が聞く。

「う…ううん、お母さんはご飯作るから…」

男同士で遊ばせろ。
拓斗さんに言われてたから、その通りにした。

賑やかな声が聞こえてくる。
元気のいい声。
この最近、聞いたこともない。


『誰とでも友達になれるんだ…』

そう言ってた人の声も聞こえる。
久しぶりに聞く男の人の声。
多分…あの人以来だ…。



……泰の父親は、一度だけこの家に来た。
結婚してもいいかどうか、話しに来てくれた。

…でも、その態度は煮え切らなくて、ハッキリしなくて…。

父が怒鳴った。

『帰れっ!顔も見たくないっ!』
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