『私』だけを見て欲しい
『一生の宝』になる様な仕事に、もしかしたら出会えるかもしれない…と感じたから。

「どうしましょー?マネージャー…」

金井ちゃんが助けを求める。

(……ヤダ。この人には助けて欲しくない…)

「私なら大丈夫…一人で帰れるから…」

いつでも一生懸命頑張る人だから…って、ほぼヤケクソで言った。

「こいつの事は引き受けた。そいつらは頼む」

飲み潰れた紗世ちゃんとれんや君を指さす。

「すいません。お願いします。じゃあ結衣、またね!頑張って!」
「うん…金井ちゃんも…いろいろありがとう…。皆もね…」

手振ってお別れ。あっけないな…。

目の前がボヤける。
涙が出てきた。

「寂しぃ…」

グスッ…と鼻をかむ。
足元がヨロつく。
おまけに頭までボーッとする。

「しっかりしろ!」

誰に言ってるの…?
私…?

「…シッカリしてますよ。私は…」

いつでも。どんな時もね…。

「そんなふうに見えないから言ってるんだよ!」

肩に触れようとする。
それを拒否した。

「…一人で歩けます…平気ですから」

言葉の上では。
実際は2、3歩でダウン。

「無理すんな!」

抱えられるようにして立ち上がった。
すぐ近くに男性の顔がある。
大好きな人の顔。
思わず頬を撫でたくなる。

(ダメ…この人には色々とあるから…)

過去に一緒に住んでた女性と、今でも付き合いがある。
仕事上だけ…とは言っても、いつまた再燃するか分からない。
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