『私』だけを見て欲しい
実家へ帰ってから、決して思い出そうとしなかった過去の記憶。
泰が生まれて間もない頃は、私達夫婦も、まだ仲が良かった…。

別れた夫が泰を抱っこして、一緒に買い物へ行った。
荷物が重いと抱っこを代わって、重い方を持ってくれた。
そんな当たり前のような日常が壊れた時、初めてそれが幸せなんだと気づいた。


…元の鞘には戻れなかった。
私も夫も、気持ちがバラバラになってしまった。
私は泰を選び、夫は浮気相手を選んだ。

泰に対して送られていた養育費は、離婚半年後に止まった。
風の噂で、相手に子供ができたんだと聞いた。

その時から、親は私一人で十分だと思った。
私の力で、この子を必ず幸せにするんだ…と誓った。

でも…近頃はよく分からない。
泰の反抗的な態度を見たり聞いたりしてると、あの子は幸せじゃないのかも…と不安になったりする。
我慢してでもあの頃の生活を続けてたら、今ほど反抗的じゃなかったのかもしれないとすら思う。

父親という父性のない生活が、思春期の子供にどんな影響をもたらすかなんて考えた日には、夜も怖くて眠れない。
自分の子だから大丈夫…なんて気休めは、私には当てはまらないんだ。


お風呂上がると当時にお湯を抜いて掃除。
これが私の最後の仕事。
そして、やっと、自分の時間が来るんだけど……

（もうダメ…眠い……）

肌の手入れもそこそこに眠ってしまう。
起きれなかった時の為の保険。アラームだけセットして…。

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