『私』だけを見て欲しい
「入院中の留守番が欲しかっただけなんだ。あいつが退院してきた翌日、アッサリ追い出された…」

暫くの間、病院通いを続けてた。
だから、病院嫌いなんだ…と教えてくれた。

「定期検診なんか行くもんか…!と言ってるような奴が胃カメラしたと聞いて、再発かも…と心配した。でも、そうじゃなかった…」

ただの胃炎だと聞き、ホッとしたらしい。
長年の友人の健康まで気遣って、ホントにいい人…。

「加賀谷は『美粧』の社長の娘で…兄弟姉妹の中では、1番の営業成績を収めてる。中でも、あのショールームの権限は彼女が握ってて、だから人事くらいどうにでもなるんだよ」

彼女の兄弟姉妹は皆それぞれ個性が強くて、幼い頃から競わされ続けてきたんだそうだ。
精神的なストレスも溜まってて、それが体調に現れたんだろう…と言った。

「泰の話を聞いた時…加賀谷や自分のことと重なった…。親兄弟がいない俺としては、あいつの気持ちが何となく分かった。親やばあちゃんには話せないことを聞いてやろう。一緒に遊んでやるだけでも、ストレス発散になればいい…と思った…」

単純に(いい子だ…)と思ったらしい。

「結衣のことも大切にしてたぞ。あいつのガラケー、お前とのツーショット写真が待ち受けだった」
「見たんですか⁉︎ 」

私には、ゼッタイに見せてくれないのに。

「たまたまな…。友達から電話かかってきた時に」
「友達⁉︎ あの子、友達いるの⁉︎ 」
「いるさ…隣のクラスに」

「なんだ…いたの…」
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