『私』だけを見て欲しい
「おはようございます!早いですね」
「おはよう」
「おはようございます。今朝は貴女も早いじゃない⁉︎ 」

いつも始業はギリなのに…って、それは言わないでおくか。

「昨日、佐久田さんにディスプレイ全部任せて帰ってしまったから申し訳なくて。出来てない所あったら手伝おうかと思って…」

感心なこと。いつもそうなら助かるのに。

「そんな必要ないんじゃないか⁉︎ もうすっかり出来上がってるよ」

山崎マネージャーが見てみろ…と前を開ける。

「ホントだ!あれから1人で作り上げたんですか⁉︎ 」
「…うん…まあね…」

そんな驚かれるようなこと?

「スゴーい!いつもながらステキ!」

パチパチ…って、いいから拍手なんてしなくても。

「佐久田さんのディスプレイはプロですよね!商品の良さ前面に出てると言うか、真似できない…と言うか」
「そんな事ないわよ。誰でもできるって」

褒められて悪い気はしないけど大袈裟だって。

「いやいや、紗世(さよ)の言う通り。簡単じゃないと思うよ」

山崎マネージャーがサブリーダーの子を名前で呼ぶ。
小森紗世(こもり さよ)
彼女は結婚する前、苗字が大森(おおもり)だった。
それが結婚して小森になって、山崎マネージャーはそれが可笑しくて、散々笑うネタにしてた。
怒った紗世ちゃんは、山崎マネージャーに、「苗字で呼ばないで下さい!」と直談判して、今みたいに名前を呼び捨てられるようになった。
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