『私』だけを見て欲しい
「すみませーん、佐久田さん…今日は友達と約束があって…」

忙しいわね…とイヤミの一つくらい言いたくなった。

「…いいわよ。チラシくらいすぐに作れるから」

強がってみたものの、一番ニガテな作業。
ディスプレイと違って、二次元の物をセンス良く作り上げるのはどうも難しい。

「…もういいか…テキトーで」

場所と日時さえ分かりゃいいんだから…と、キーボードを叩く。

フレームをネットで検索して貼り付ける。
字体とフォントを選択して、なるべくパッと一目で分かるようにする。

「うーん…」

悩めば悩むほど、どれがいいのか分かんなくなる。

(弱ったなぁ…)

相談しようにもフロアの社員は全員退社した後。
金井ちゃんトコにでも行こうかな…と考えてた頃ーーー

「…何してんですか?」

背後から声をかけられた。
ビクッ!と背中が伸びる。

「だ…誰⁉︎ 」

手に持ってたマウス。
悪い人なら叩こうかと振り上げた。



「……れんや君…」

昨日の『彼女』発言の人。

「佐久田さん…まだいたんですか⁉︎ …雑貨フロア、誰もいないって聞いたのに…」
「私以外の人、皆帰ったからじゃない⁉︎ 何しに来たの⁉︎ 」

振り上げてたマウス下ろした。

「売り場見学。ディスプレイがスゴいって聞いたから。佐久田さんはこんな時間まで何やってんですか?」
「…これ。新歓パーティーのチラシ作り」
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