『私』だけを見て欲しい
側を離れてく。
エレベーターの前に作られたディスプレイコーナー。
昨夜のこの時間は、コレにかかりきりだった。


「スゲぇなぁ…ここにあるの、全部このフロアの商品でしょ⁉︎ 空き箱から何から使いきって飾るなんて…プロっすよ!」

誰が作ったかも知らないのに褒めてる。
可笑しいったらない。

「…これ、誰が毎回作ってるんですか⁉︎ この間のサクラの時もスゴかったっすよね⁉︎ 」

3月の初めまで飾ってたディスプレイのこと。
卸会社はサイクルが早い。
常に季節を先取りしなきゃ駄目。

「アレも今回のも、作ったの私。たった1人で毎回やってんの!」

誰も手伝ってくれないから大変なのよー…と愚痴った。
ポカン…とした顔の『れんや』君。
はっ…と我に返って、手を握った。

「スゲぇ!!」

大きな声。
思わず耳がキーンとなった。


「スゲぇ!スゲぇ!才能だよ!コレ!!」

手放しで褒めちぎり⁉︎
いったい何がどうしたっての⁉︎

「佐久田さん、あんたスゲぇよ!こんな技術持ってんのに、なんでこの会社にいんの⁉︎ 」

勿体ねぇ…って、誰に言ってんの⁉︎ …ワタシ⁉︎

「一体どんな感覚で作り上げてんの⁉︎ 計算してんの⁉︎ 」

興奮気味に聞かれたって…何も考えてない。

「特に計算も何もしてないよ。昔かじったインテリアコーディネーターの勉強を活用してるだけ」
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