『私』だけを見て欲しい
「結衣も気をつけなさい。あの天然さには、怖い毒があるよ…」

新歓パーティーで彼女役を引き受けることにした…と言ったら、もうヤバイかも…と呟かれた。
『れんや』君のお願いに付き合った女子達は、確実に彼のことが好きなるからだって。

「へぇー…そうなの⁉︎ でも、私は大丈夫よ⁉︎ 」

絶対に当てはまらない。
きっと一瞬で解放される。

「心配ご無用!」

笑ってお昼の休憩を上がった。
フロアでは『美粧』さんから届いた新商品が、続々と箱から出されてた。


「…それ、もう届いたの⁉︎ 」

驚いて近寄った。
クッション材に包まれた陶器の鉢やカバー。
大小いろんなサイズがあって、それぞれにあのクロネコのモチーフが付いている。


「可愛いー!それに色もキレイ!」

紗世ちゃんが喜ぶ。
誰が見てもそう思うハズ。
ただ、そのクロネコのモデルが、山崎マネージャー家の飼い猫だってことはシークレット。

(くくく…)

含み笑い。
あれ以来、山崎マネージャーは私のことを避けてるみたいで、売り場には滅多と下りて来ない。
おかげで急な仕事を振られる事もなく、この1週間は早く帰れた。

(『美粧』さんから商品届いたこと、言いに行かなくていいのかな…)

伝票は事務所に上がると思うけど、目に入るのはいつ頃だろう…。




「……あっ!山崎マネージャー!」

紗世ちゃんの声に振り返る。

「…商品、届いたろ?」
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