『私』だけを見て欲しい
取り敢えず返事だけして逃げる。
中堅社員のイヤな立場。下には厳しく、上からは重圧…。


(やれやれ…こんな人気のない行事…どうやってあと10人も増やすのよ……)

バインダー片手にウロウロしてたのは、各フロアや部署を歩き回ってたから。



「…お願い!ここが一番参加人数少ないのよ!あと二人でいいから誰か呼んで⁉︎」

外商部で頭を下げる。
同期入社の友人、金井(かない)ちゃんは、弱ったな…って顔した。

「その日は、大きな取引があって忙しいのよ、うちの部署…」
「分かってる!でも、全員がそれにかかる訳じゃないでしょ⁉︎ 新人の子だけでもいいから…!ねっ⁉︎ お願い!」

手を合わせて拝み倒し。
金井ちゃん、困ったな…と言いながら、部署の中を見回した。


「あっ…ちょっと、蓮也(れんや)!」


デスクから立ち上がった若い男の子を呼んだ。

「何ですか?金井さん…」

ネクタイを緩めに締め、スーツ着崩した男性社員が、私達の側にやって来た。

「あんたさ…来週の金曜日の取引、関係なかったわよね⁉︎ これ出てやってくれない⁉︎ 」
「あ…⁉︎ 何ですか⁉︎ これ…」

バインダー取り上げられた。

「新歓パーティーのご案内⁉︎ …うわっ、メンドくせー!」
「…そう言わず、協力してやってよ!今回の幹事、雑貨フロアらしいのよ…」

友達なの…と私を紹介する。
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