『私』だけを見て欲しい
紗世ちゃんが何気なく言う。
ジョーダンは勘弁して欲しい。この間変えたばかりだというのに。

(しかも、私が一人でね…)

心の中で追加する。
「ミニガーデン」という紗世ちゃんの言葉に魅かれるものはあったけど、あえて今日はしたくないと思った。

(新歓パーティーもあるし…始めたら、きっと出来上がるまで帰れないから…)

懸命にディスプレイをやり直す自分の姿が見えてくる。
ため息をつく私の側で、山崎マネージャーが声を発した。

「そんなふうに思うなら、紗世が作ればいい」

ハッとして振り向く。
見上げた視線の先、山崎マネージャーの横顔が怒ってた。

「いつもいつも佐久田さんにだけ任せてるだろ⁉︎ たまには自分が作ってみるのもいいんじゃないか?」

イヤミ?それとも励まし?
真意は分からないけど、声だけはムッとしてる。

紗世ちゃんの顔が曇る。
自分で言った言葉だけど、そこまでの深い意味はなかったようだ。

「私にはそんなの無理ですよ〜…佐久田さんにみたいに上手くもないし…」

ヤル気がないのか言い訳なのか、とにかくしたくないって事だよね。

「だったら気軽に言うな!頑張ってるやつが困るだろ⁉︎」

私のこと見もしないで話す。

…気持ちが救われる。
1人で作り上げてること、ちゃんと認めてくれてた…。

「はーい。気をつけま〜す!」

反省の色もない返事。
紗世ちゃんには何を言っても、暖簾にクギみたいだ。
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