『私』だけを見て欲しい
(ふぅん…案外、お酒強そう…)

同僚のマネージャーから注がれてる。
ビールのグラスと一緒に並んでるのはチューハイ?それとも日本酒?


「佐久ちゃーん!」

偽装カレシが呼んでる。行かなくちゃ…

「はーい…」

心の込もらない返事。
ゆっくりと近付いた。

「お待たせ…」

座り直そうとしたら、腕を引っ張られた。
倒れそうになる私を、『れんや』君が抱き寄せる。

(えっ…⁉︎)

意外な展開にビックリ。
なんでこんな事になるの⁉︎…と顔を上げた。

「仲いいトコ見せて…って言われたから」

間近でウインク。
合わせて…ってこと⁉︎

「そ…そうなの⁉︎ ヤダな…恥ずかし…」

少しだけ本音。
人前でこんなふうに密着するのなんて、元夫ともあまりなかったから。

「佐久田さん顔赤いー!照れてるー!」

(紗世ちゃん…あんた、またこの場に来たの⁉︎ )

『れんや』君に何か頼まれてるの…⁉︎ って気すらしてくる。
紗世ちゃんはさっきと同じ調子で、彼と私を茶化した。

「佐久田さん、こうやって見てるとフツウの女子みたいですよ〜」

(当たり前でしょ!こう見なくても私はフツウに女子よ!)

またしても、心の中でツッコミ。

「蓮也くんと佐久田さんって、年の差カップルですよね⁉︎ いくつ年離れてるの⁉︎ 」

紗世ちゃんの言葉に、お互い顔見合わせる。
私は34だけど、『れんや』君は…⁉︎

「オレ25。佐久ちゃんは34だから、9才年上だな」
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