『私』だけを見て欲しい
(ヤバい…この感覚…)
思い出したくもないことを考える。
別れた夫と恋に落ちた時、私はあの人しか見えなくなった。
今の自分と違ってるのは、バツイチでも子持ちでもなかったってことくらい……。
「れんや君…」
立ち止まる。
自然と離れていく手。
握り直そうともしなかった…。
「…今夜はここで。もう解放してもらっていい?」
会社の人達はいない。
視線を気にする必要もない。
「私…帰らないと…家族が…待ってるから…」
これが現実。
逃れられない真実。
年下の彼には似合わない。
やはり、ウソの世界だけのカノジョ…。
「…そ、そうっすね。スンマセン。遅くまで引き止めてしまって…」
思い出したような彼。
そんな表情されると切ない。
自分の立場が強調されるようで。無性に寂しくなる…。
「ううん…こっちこそ。…じゃあ、また、会社でね…」
バイバイ…と指を揺らす。
少し離れた場所にいるカレが、少しだけ笑って手を振り返した。
…胸が痛い。
抱いてはいけないと思いながらも、やはり自覚してた。
(…惹かれ始めてる…)
『気をつけなさい…』と言った金井ちゃんの言葉を胸に背を向ける。
歩き出した後方にいるハズのカレを、思ったまま、家に帰ったーーーー。
玄関に着いたのは、午後11時。
外の明かりをつけてままにしてくれたのは、きっと母だろう。
「ただいま…」
小さな声を出しながらドアを開けた。
し…んと静まり返る廊下。母も泰も、眠ってるみたいだ。
思い出したくもないことを考える。
別れた夫と恋に落ちた時、私はあの人しか見えなくなった。
今の自分と違ってるのは、バツイチでも子持ちでもなかったってことくらい……。
「れんや君…」
立ち止まる。
自然と離れていく手。
握り直そうともしなかった…。
「…今夜はここで。もう解放してもらっていい?」
会社の人達はいない。
視線を気にする必要もない。
「私…帰らないと…家族が…待ってるから…」
これが現実。
逃れられない真実。
年下の彼には似合わない。
やはり、ウソの世界だけのカノジョ…。
「…そ、そうっすね。スンマセン。遅くまで引き止めてしまって…」
思い出したような彼。
そんな表情されると切ない。
自分の立場が強調されるようで。無性に寂しくなる…。
「ううん…こっちこそ。…じゃあ、また、会社でね…」
バイバイ…と指を揺らす。
少し離れた場所にいるカレが、少しだけ笑って手を振り返した。
…胸が痛い。
抱いてはいけないと思いながらも、やはり自覚してた。
(…惹かれ始めてる…)
『気をつけなさい…』と言った金井ちゃんの言葉を胸に背を向ける。
歩き出した後方にいるハズのカレを、思ったまま、家に帰ったーーーー。
玄関に着いたのは、午後11時。
外の明かりをつけてままにしてくれたのは、きっと母だろう。
「ただいま…」
小さな声を出しながらドアを開けた。
し…んと静まり返る廊下。母も泰も、眠ってるみたいだ。