『私』だけを見て欲しい
Act.8 ひとり者のカレと彼
「…今日こそは是非!」

連日ランチの誘いに来る『れんや』君に根負けしたのは、それから5日後のこと。

「奢ってくれなくていいのに…」

断る私に、彼は「どうしても!」と言い張った。

「奢るって言ったら、『はいはい』って返事してくれたじゃん!だから奢るっ!」

子供みたいに意地を張る。

社内で一緒に行動するのは気が引ける。
周りの人達が、どんな目で私達のこと見てるかが気になるから。

「…ホントにいいのよ。私にはお弁当があるんだから…」

早起きして作った甲斐がない。
それでもいいから…と、社食に連れて来られた。


「…あ!…結衣ー!」

テーブルについてた金井ちゃんが手を上げる。

「金井ちゃん…!」

助けて…とばかりに近寄った。
金井ちゃんは定食のお膳を前に、今から食べようとしてるとこだった、

「珍しいじゃん。結衣が社食に来るなんて…」

驚かれた。
私がお弁当派だってこと、彼女が一番よく知ってる。

「れんや君に誘われて…新歓のお礼したいって、毎日フロアに来るんだもん。とうとう根負け…」

はぁ…と小さなため息つく。

「へぇーそう。イイじゃん!たまには社食も美味しいよ!」

座りなよ…と指差す。
まだ何も頼んでもないから…と断りかけた所へ『れんや』君がトレイを二つ抱えてやって来た。

「…はいっ!特Aランチ!」
「特Aランチ⁉︎…」
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