『私』だけを見て欲しい
「れんや君にランチに誘われて応じたのはいいんですけど、お弁当作ってきてたもんですから…」
「だから、オレが頂くことにしたんです!」

れんや君の箸が伸びる。
それを制して、マネージャーがお弁当を取り上げた。

「待て!お前はそれを食べるんだろう?」

ポカン…とする『れんや』君。
ムリもない。私も驚いた。

「…そうっすけど…」

呆然としたまま構えてる。
それを聞いて、マネージャーは満足そうに頷いた。

「だったら、これは俺が食べる。お前はそっち食え!」

勝手に決めてしまう。だから『れんや』君がぶうたれた。

「え~⁉︎ なんでっすか!…それ、オレがもらったんっすよ⁉︎ 」

不満気な声が響いた。
マネージャーはそれを無視して椅子に座り、お弁当に手を合わせた。

「いただきます!」

キレイな合掌。
指先がきちんと伸びて、箸を持つ手も格好いい。

箸の先で摘まんだ卵焼き。
嬉しそうに頬張った。

「……美味い!」

驚くような声と表情。
ほっ…と胸を撫で下ろした。

「美味い!ホントに、お世辞抜きで!」

嬉しそうに食べてる。
呆れる『れんや』君。
金井ちゃんはクスクスと笑った。

「山崎さん、どんだけ手料理に飢えてるんですか!」

呆れながらツッコミ。
マネージャーはにっこり笑って、こんなふうに言い返した。

「俺は独り者だから、手料理なんか殆ど食わないんだよ!だから飢えて当たり前!」
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