『私』だけを見て欲しい
(なんだ…私だけに言ってくれるんじゃないのか…)

当たり前よね…って気がしてくる。
モテ男くんは可愛い。だからファンだって多い。

「…れんや君、他の子に作ってもらって。今日はありがとうね。ごちそうさま」

何とか3分の2は頑張って食べた。
でも、やっぱり特Aランチは多過ぎる。

年下の『れんや』君も同じ。
自分の身には、持て余す。

「もうこれでお互い様ね。…じゃあ」

残ったランチを片づけに立ち上がる。
おかずを捨てるのは勿体ない。できれば持って帰りたいくらい。

…こんな事を考える私には、社食は向かない。
やはり手作りのお弁当くらいで丁度いい…。

ーーー片思いも同じ。
身の丈に合った人を相手にしたい…。

(できれば……だけど)

…諦めながらフロアへ帰った。
エレベーターの前では、大きな段ボールが届いてる。
地下の運送部から上げられた商品。
伝票を広げて、中身を確認した。

(ビーチサンダル、浮き輪、ビーチボール、サーフボード…)

夏限定商品。
山崎マネージャーの言ってた通り、1回分の入荷数にしては極端に少ない。

(こんな量で大丈夫⁉︎ …追加発注しなくていいの⁉︎…)

梱包を解きながら作業を進める。
これらの商品に夏の小物を使ってディスプレイを変更する。
検品しながら思い描く夏の日々。


……父が亡くなったのは、暑い夏の日の午後だった。


私は泰をぬるめのお湯の中で水浴びさせてた。
首の周りに汗疹がたくさんできて、痒そうだったから。

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