『私』だけを見て欲しい
自信をくれるヒト
ドキドキしたまま検品を続けてた。

手に取るビニール商品を見ても、さっきの様なことはない。
肩に触れた手の感触が、それを忘れさせてた。


山崎マネージャーは、熱いコーヒーがかからないように抱き寄せてくれた。
その行動と先に言った言葉との接点はないようで……実はスゴくあった。

「今言ったこと…本気だから…」

耳元にかかる息に、大きく胸が鳴った。
顔を上げると、どこか照れる。
本気なんだ…と分かった瞬間、怖くなった…

ぐい…と体を押しのけるようにして外へ出た。
ドキドキしながら階段を下りる。
エレベーターの前では、紗世ちゃんが仕事もそっちのけで、ケータイをいじって遊んでた。


「あ…おかえりなさい。気分良くなりました?」

慌てたように隠す。
マネージャーの心配してた通り。
この子がマジメに仕事する訳がない。

「…検品進んだ?」

何も見てないように近づく。
悪いのはこの子じゃない。気分が悪いと言って、逃げだした自分がいけない。

「種類が多くて…あまり進んでませーん」

やってもないのにこの言い訳。
これでサブだなんて、よく言える。

「…一緒にやろうか。手伝うから」

子供みたいな彼女と再開する。

やりきれない思いに駆られてしまう。
仕事を怠ける紗世ちゃんも、マネージャーの言葉や態度も全部イヤになる。

…何もかもから逃れたくなる。
自信のないこと全てから、逃げ出したい…。
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