『私』だけを見て欲しい
雑貨フロアに戻ってきた私を見るなり、新人社員が走り寄ってきた。

「佐久田さん…どうしましょう⁉︎ 」
「何が…⁉︎ 」
「今、お客様から電話注文あった商品なんですけど、欠品で…メーカーの方にも在庫ないらしくて…納品早めに…って言われたんですけど、どうしたらいいか分からなくて…」

(そんな事も分かんないの…⁉︎)

言いたいこと抑える。

「…だったら直ぐにメーカーに電話して!次の生産上がるのいつか聞いて。生産中止なら中止で、お客様に謝らないといけないから…!」
「分かりました…!」

「…あっ!佐久田さん、丁度良かった!さっきの追加注文の件なんですけど…」
「それ後回しにさせて。先にやる事あるから、それ済ましてから聞く!」

矢継ぎ早に仕事が入る。
自分の持ってる仕事以外にも、聞かれることが多いから大変。
のんびり部署回って、新歓パーティーの参加者集めやってる暇なんて、こっちにはないんだから…。



「あっ…マネージャー!」

新人の子の声に振り向く。
最上階から時々降りてくる統括マネージャーの山崎(やまざき)さん。

背が高くて体格がいい。
肩幅が広くて、ラガーマンみたいな感じ。
なのに顔は細くて、どちらかと言うとインテリ系。
一見冷たそうに見える顔は、いつも半ば眠たそう…。

「よぉ…売れ行きどう⁉︎ 」

新商品のチェックに来たみたい。
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