そのままの君でいて
愛恵は、家に電話をした。
「もしもし?」
「あら。めづらしい…。しかもこんな時間に・・・」
母親だ。
「お母さん、しばらく、お父さんと旅行にでも行ってくれないかな・・・」
「どうしたの?」
「チョット、いま、付き合っている人が居て、そのことで、ウチにもいろんな人来るかもしれないから…」
「そう。わかった。・・・体は?食べてる?」
「うん。元気よ」
「彼氏できたんだ?」
「…マァ…」
「今度、つれてきなさいよ」
母は、そういって電話を切る。
深く追求しない。
いつも、母は自分を守ってくれていた。
落ち着いたら、彼を実家に連れて行こう…
これから、事務所でメンドクサイ話で大変なのだろうが、愛恵は、ほとんど気にしていなかった。
前に、優に答えたように…
答えは決めていた。
堺が来た…。
________________________
事務所までの車の中2人は終始無言だった。
事務所には、社長の福永、副社長の彼の弟…が待ち構えていた。
机の上には、書面と写真の束。
「座れ」
愛恵はソファに腰掛ける。
堺が全員分のコーヒーを用意した。
福永は、机上の書類、写真を愛恵に渡した。
ずいぶん前からの、彼との写真が撮影されていた。
書面には、脅迫めいた事が書いてあった。
金で、この写真を買い取れという事だった。取引に応じないなら、マスコミに流す。