そのままの君でいて
同じ便に乗る人 両替をしているひと。
まだ夏休みの空港は 本当にひとが多かった。
「じゃあな。がんばれよ」
康介は僚介と 手をたたく合図をする
「お前もな。愛恵を頼む」

このゲートをくぐれば しばらく 本当に あえないのだ。

ゲートまえには 人員整理のロープが引かれていて 順番まちでの かなりこみあっている 出国ゲートになっていた。

「…気をつけて」
「愛恵も。仕事がんばれよ」
「僚介も学校頑張って」笑顔でいたいが 愛恵の顔には そんなものでてこなかった。

僚介は
最期まで居られると寂しいし 混んでいるから もう 見送りはいいと 列に並び始めた。

愛恵と康介もその方が
得策だと ゲートから 引き返す。

何度か ゲートを振り返る。

彼もまた 愛恵の姿をおっていた。

ゲートが見える ギリギリのラインで 康介と一緒に 僚介の出国を見守っていた。

まだ 目が会う… あと 10人くらい まえにひとがいる。

あと数分で 本当にしばらく あえないのだ。

ゲートの検察官に僚介がパスポートとチケットを手渡す その直前だった。

愛恵は荷物をその場に落し 帽子もサングラスもはずして

「リョースケっっ…まって」
叫んだ。

僚介も検察官に ごめんというと、人込みをすり抜けて 走ってくる愛恵のもとへ 急いで かけた。

驚いたのは 周囲。

そこで 抱き合い キスをしているのは

藤倉愛恵だ。

もうしばらくあえないのに。隠れて遠くからしか見送る事さえも出来ない自分に腹が立った。この程度の噂で来なくなる仕事ならいらない。そんな世界ならいらない。「女優」という肩書きは一瞬、姿を消した。…しばらくすると ものの数分で 事態は最悪になった…

危険を感じた 空港側が 急いでその場の処理にあたる…

そんな 騒ぎの中 彼は旅立った…
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