そのままの君でいて
「愛恵?」
「愛恵さん?」

受話器からは康介が… 隣からはマネージャーが…

彼女の頭の中は、真っ白だった…。

数10分前まで、大勢の祝福と喝采の中にいたはずだ。

数分前に 自分は 康介に電話をかけた。

「兄貴が死んだ」

何が どうなっているというのだ。

「…康介?…」
違うと 間違いだと 言い直して…
彼女は心と中で叫んだ。
「愛恵。僚介が…死んだんだ」

彼女は、決定的な一言を聞いて 叫んだ。

そのまま 失神したらしく、愛恵の気が戻ったのは、懐かしい 長谷川家の。見慣れた部屋。
僚介の部屋の、僚介のベッドの上だった。


「ん…」
愛恵の声に 気付いたのは康介だった。
彼はずっと 愛恵のそばに居た。

「…だいじょぶか?」
愚問だ…。

「…訳がわからない…」康介は愛恵に グラスに入った水を手渡す。

愛恵が車中で気を失った後 繋がったままの電話から聞える 康介の声に マネージャーが異常を感じ 事情を康介から知ったマネージャーは 車を長谷川家と向かわせた…

「…本当に、本当のことなの?」
愛恵は、確率の低い質問をした。

たまに 留学生が死んだりしても 人違いだった など 良くある事だ…

「間違いじゃない。残念だが、本当だ…」
康介も、涙目になっている。詳しくは まだ 分からないのかもしれない。
本当に悲しいと 涙が 出て来ないと 良く言う。
愛恵も それなのかと 思った… そして 何より 真実を自分の目で 確かめるまでは…

彼の死など 受け入れられるわけなど なかった。

左手の薬指には… 彼から今朝 届いたばかりの指輪が 光っていた。

いつ… 死んだとゆうのか。

原因は?

愛恵には これから やらなきゃならないことが やまほどあった。

そして。

受け入れなければならない現実が

やまほどあった…
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