そのままの君でいて
10年という年月
そして、今日。
彼の死から10年という年月が経とうとしていた。
愛恵は、今では 大がつく程の 『女優』になっていた。

康介も、僚介の死以来 家系で医者になることを拒んでいたのに、今では彼もまた、患者の立場に立つ事が出来る 立派な医者になった。


僚介の命日には 必ず2人で ささやかながら パーティを開いた。たいしたパーティではない。
いつも飲むときと 変わらないが、その日だけは、グラスを3つ用意した。レストランでならば 3人分で 予約を入れた。

そうしてきた。これからも 変わらず するのだろう。


康介は、彼の目線から 常に彼女を見て来た。
兄の死を 完全に 受け入れられないでいる彼女を… どうしてやることも出来ないでいる自分。

兄の死後から、恋愛 仕事 生きることに関して、愛恵は 無関心に思えた。

10年。

それぞれの想いを 抱き 未だに 消化出来ぬまま
少なくとも 愛恵と康介は、そうしてきたのだ。
< 19 / 136 >

この作品をシェア

pagetop