そのままの君でいて
愛恵の頭と心の中は グチャグチャだ。

自分勝手なエゴで、彼を 縛ろうとしている。

自分に 手に入らないモノなど… ない。


もぅ 涙を堪えるのが 限界に達していた。

今度は愛恵の目線が、握り合った手元から 離れない。


嫌…

今 顔をあげたなら、ジョーに 今にも泣きそうな顔を見られてしまう。
彼の手を握る愛恵の手が震える。

ジョーは
「だいじょぶ?」
また、愛恵の顔を覗き込もうとしたから…

とっさに 彼女は 立ち上がると

後向きのまま

「ジョー。道わかる?わからなければ公園でたらタクシーに乗りなさい」
帽子をさらに深くかぶり直すと 一万円札を ジョーに握らせた。

「ごめん。これから行くところがあった。わすれてた。今日は楽しかった。ありがとう」

「あ~。お金はだいじょぶだよ」

「使わなかったら、あとでかえして!あと返事もそのうち、聞かせて」

早く この場を立ち去りたかった。

少しでも 早く 一人になりたかった。

愛恵は 立ちすくむジョーを 彼に分からないくらいの 角度で見ると

「またね。おやすみ」

走り出した。
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