そのままの君でいて
「なつかしぃな…」
「セレブな長谷川センセーは六本木か赤坂とかでしかもう飲まないの?」
2人はホルモン焼屋に入る。生ビールを一気に飲みほす。

「この飲みかたじゃ、六本木じゃあ…アハハハ」
康介は口の周りに泡を付けたまま 笑う。


「全然かわらないね」

優は左手で彼の口元を拭う。

「優も、かわらん。ちょっと年食ったかな」

「一言余計~」

海外協力隊に参加して 4年たつ。

旅立ちの日 彼は空港まで見送りに行った。


華奢で、色も白くて 頼りなさげな雰囲気だった。

4年後。

今の彼女は、日に焼け 体格はかわらずだが 逞しくなっていた。

2人は1時過ぎまで
飲む。

「どこに泊まってんだ?」
「テキトゥ…」

「あいかわらずだなぁ」
相当酔っ払っている 彼女を どこかのホテルへ泊まらせる訳にもいかず。
康介は 診療所に連れて行くことにした。

車中では
「気持ち悪い…」

「飲み過ぎだ…もうつくから」

診療所の2階が住居スペースになっている。

古い4DK。

一部屋は康介の寝室。 一部屋は客用。
一部屋は書斎。
一部屋は物置化していた。
一人暮らしには広すぎるくらいだ。

康介は、居間のソファに彼女を寝かすと、水を運ぶ。

「胃薬だ。飲んどけ。明日楽だから」

それから バスタオルと自分のスウェットを出す。

「優…そのまま寝てもいいし。シャワーするならそれ使え。オレは向こうでレポート書いてるからな」

「…んん…」

康介は 苦めにコーヒーを作ると 回らない頭で机に向かう。


10分くらいで 睡魔が襲ってきた。

「あーチクショーがぁ。まぢでやばいぞ。オレガンバレ」

彼は酒臭いのがだめなんだと。

眠気も覚めるだろうと、シャワーを浴びることにした。

リビングのソファを覗くと 優は寝ているようだった。


熱めのお湯で、アルコールを飛ばす。


彼も久し振りに飲み過ぎた…

優と 思わぬ再会がとても嬉しかった。


そして、前面に熱いお湯を感じながら 後方に 少し冷たい空気を感じ

後を振り向いた。
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