そのままの君でいて
15分くらいだろうか、愛恵が、着替えて戻るとジョーは、窓際がちょうど座れるくらいの幅で出窓になっていて、そこに座り、窓ガラスに頭をくっつけて、

寝ていた。

愛恵は、疲れているんだろうなと思った。

彼は恐らく、いくら自分や康介のような 「味方」を見つけられたとはいえ、
オバーさんを探したり、職を見つけたり、生きていくのに、何一つ 安心材料なんて無いのだ。

「ジョー、寝るなら、ベットで・・・ほらっ」

男の体を持ち上げる事は出来ない。

「んん・・・マミィ、ダッド…」

そういって、愛恵に抱きついてきた。

夢を見て、寝ぼけている…のだなと愛恵は思った。

寝ぼけている割に、結構強い力で抱きしめる。

愛恵は、コレはダメだと思い
「ジョー、起きて…ジョー?」

彼の体をゆする。

少しして、彼は、完全に目覚めた。

「…愛恵さん、ごめん。夢みてた。ごめんね」

「私は、大丈夫よ。ソレより、家族の夢見てたの?」

ジョーは、自分の生い立ちを簡単に話した。

愛恵は、少し驚いた。

共通点は大切な人を事故で亡くしている事…。

若かった分、他に誰も居ない分、さぞかし辛かったに違いない。


「ジョー。もう大丈夫よ。何も心配要らない。私も、康介も付いてるから」

「ありがとう。でも、どうして、こんなにボクに優しくしてくれるの?ボクは、お金もないし、普通なら、怪しまれてもおかしくないのに・・・」

愛恵は、

「昔、付き合っていた彼に似ているから」

なんて言えない。

康介が、最初の日に

「奴は兄貴じゃないぞ」

という言葉が、胸に突き刺さる。

愛恵は、最初は、確かに彼があまりにも遼介に似ている事が、気なっていたが、

この3週間、彼「ジョー・サクストン・Jr・及川」という一人の青年を、

きちんと、見ていた。

彼が、遼介では無い事。

彼の代わりとして、こんなにも気なっているとは、もはや考えにくかった。


何よりソレは、…

ジョーと出会ってから、「あの夢」を見る回数が減っていたから…。



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