そのままの君でいて
「イヤァ。25じゃ元気よね。いいわ。いい…いい。逃しちゃダメョ」

愛恵はわらいながら、まだわからないのと 付け加えた。

ケンは あんた 男を見る目ないから 近いうちに 自分に合わせろと… 言った。

2時間遅れで 収録が始まる。

「愛恵ちゃん、今日は遅くなっても撮っちゃうからね。今日頑張っちゃえばあとは楽勝だから~」
一体 何時になるのだろう…

今日は、ジョーには会えないなぁと…

愛恵は、意識を仕事に 集中させた。

「テイク1シーン36~」

「なぜ?なぜ…いつもそうなの?」

「わかってこうなったはずだ。僕は妻とも君とも別れる気はない」

「もう嫌…。いつもいつも…私は娼婦じゃないっ」
「あっはっはっ?何だと?」
「娼婦じゃない」
「あぁ。そうだな。娼婦は自分を娼婦だとわきまえている。お前は娼婦以下だ」


数秒後…

「OK~」


「まなちゃん、なんかいつもと違う…ドキドキしちゃうなぁ」

相手役の高岡重治だ。
不倫の話で 愛恵は妾の役。

こんなストーリーだから 濡れ場が話題となり 高視聴率を叩き出している。藤倉がどこまで 脱ぐか。世間はそんなことにしか 興味はない。

毎回 セックスシーンがある。もちろん溜め撮りだから、今日はないはずだ。


愛恵は、堺をよぶ。
「ネェ堺くん。抜けて何でもいいから携帯かってきて」
「は?」
愛恵はジョーと連絡をとるのに 携帯が欲しかった。
「プリペイドでいいから、早く」
「わかりました」
堺は スグに コンビニへ向かう。

また高岡がやってきた。「今夜どう?終わったら」
「そのうち…。お誘いありがとうございます」

愛恵はやんわりとことわるが、高岡はしつこく愛恵を誘ってくる。

ケンが それを見ていて 「イヤーん。まなちゃん、ちょっとメイク直すわ~」

高岡は 渋い顔で 仕方なくその場を去った。

「ありがとうケンち」
「キモいわ。あたしも嫌いなタイプ」

愛恵とケンは笑った。

< 66 / 136 >

この作品をシェア

pagetop