無口なDarling+α


「すっげ、久しぶりだから?」


私の放心状態を見ながら猛が苦笑いをする。


「好き、だから・・・」


何かに取り付かれたように“好き”という言葉を呟く。


何回言っても、足りないから。


「関係ないだろ。しかも知ってるし」


ニヤっと笑う猛は、前のままだ。


変わったのは私なんだと実感する。


今日がこんなに幸せだと、明日のことが不安になるのはいつから?


今日がこんなに楽しいと、明日は悲しくなるのかなって思い出したのはいつから?


時間に限りがあると思い出したのはいつから?


「澄子・・・」


「猛・・・」


嫌いにならないでね?


ずっと好きでいてね?


大丈夫だから、私。


ちょっと会える時間が減ったくらいで、泣かないから。


だから・・・


「今度出かけるか」


「え?」


猛が急に私の顔を覗きこんで、そう言った。


「車であんまり遠出した事ないだろ?高校の時からよく言ってただろ?」


そう、二人乗りのバイクではあんまり遠出はしたことが無かった。


だから猛が車の免許を取ったら、猛の車で色んなところへ行こうって約束してたんだ。



「猛、めんどくさいって言ってたのに」


クスクス笑うと、猛もホッとしたように微笑んだ。


「来週の土日で行こう。バイト休み取ったから」


「嘘!?」

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