時間
「あー、あっつー……。」
おばあちゃんが検査入院をしてから2週間後の、よく晴れた日曜日。
今日は、亜希の誕生日ということで、亜希の家に、いつものメンバーで集まってお祝いをしていた。

「ちょっとユカ、せっかくの誕生日に暑い暑い言わないでよ!萎える!」
亜希は、オレンジジュースを飲みながらユカに怒る。
「ごめんごめん!てかさ、2人とももう進路希望調査の紙書いた?夏休み前にもらったやつ。」
ベッドに寝そべっていたユカは、体を起こしながら質問する。
「とっくの昔に書いたよ、そんなの。てか、昔から決まってるし。」
亜希は得意げに言う。
「へー、で、何になるの?」
「小学校の先生!」
「あー、亜希向いてそうだよね、子ども好きだし。」
私は、それを聞いて納得した。
亜希は頭もいいし、教えるの上手いし、適職だなぁ、なんて思った。
「ありがとー!頑張るぜ!……愛梨は医者になるんだっけ?」
「昔からなりたかったー、って1年とき言ってたよねー。」
ユカはいつの間にかベッドから下りてクッションに座り、スナックをつまみながら言う。

亜希やユカの言う通り、私には医者になるという夢があった。
だから、そのために必死にやってきたんだ。
……でも、何で医者になろうと思ったんだっけ?
…… 思い出せないや。

「で、大学とか決めてるの?」
「うん。県外だけどね。」
「県外かぁ、寂しくなるねー。」
亜希がしみじみと言う。
「よし、それじゃあ卒業パーティーと愛梨見送りパーティーしようよ!」
「ユカ、あんたそれより進路早く決めなきゃでしょーが。」
「あー、そっかそっか。」
コントのようなやり取りに、笑いが起こる。

このいつもの光景が、卒業後はなくなるのかと思うと、寂しくなった。
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