君しか知らない世界
こいつは人の領域に土足でズカズカと入ってくる。遠慮を知らない、図々しいといったところか。

「話す声がでかい。化粧がケバい。香水くさい。笑い声を押さえられないのか?人の悪口で盛り上がる所も、つまらない噂話を鵜呑みに喜んでる所とか、すぐ泣くところとか。もう、全部...」

しまった、と思った。これでは谷地に八つ当たりしているようなもんだ。


「でもさあ?それって一部の女子だけじゃん?そもそもの話なんだけど、うちの高校は化粧すら禁止されてるってことしらないの?」

「...確かに」

「香水つけてる人はいるけど、そこまでプンプン匂い放ってる人は、あたしはみたことないよ!」

「...俺はクサイと思った。」

「もしかして、自分の過去に照らし合わせてるとか?元カノとか?実はカズマの元カノがそういう女だったんだ?君はギャルとでと付き合っていたのかい?すごく以外...」

「...しつこい。」

これ以上、谷地の推理には耳も貸したくない。心の奥にしまった過去を彼女はどんどん開かせてくる。

やめてくれよ、思い出したくないんだ。

「...ごめん、カズマ。」

谷地はそう一言残して、帰ってしまった。

お前は急に人を呼び捨てにしたり、人の領域にズカズカ入り込んできたり、こんな俺でも怒りの感情がでてしまうんだ。

きっと、俺以外の友達なんていないんだろう?
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