君しか知らない世界
「下調べ?」
疑問に思った俺は口に出して呟いてしまったようだった。
「え、あっ、えっと、いや、一年生の時からあの子ちょっと有名だったからどんな子かな〜って...あはは...!」
明らかにいつもの態度ではないが、谷地はこういう人間だ。
「...あっそ」
紅林の話で盛り上がっている時だった。
「ふ、ふざけるな!!!!」
学年主任の大声で昼食をとっていた二学年全員が一斉にそっちを向いた。
俺たちが会話してる間も何か説教されているようだったが
紅林のことだからまた爆弾発言でもしたのだろう。
「いいえ、ふざけてません。私は本当のことを言っただけです。」
紅林は全く表情を変えない。
そのポーカーフェイスっぷりは尊敬するが、人前で目立つ行動だけは避けたい俺にとっては、ある意味羨ましいと思ったりもする。
「紅林!あとで俺のとこに来い!午後のオリエンテーションには参加させんかんな!」
「わかりました」
このかわしっぷりにクスクス笑っている生徒もいた。