押してダメでも押しますけど?
社長の秘書を外された時はなんかちょっと凹んでいたけれど、それ以降は、社長を気にかけている余裕なんか無かった。


それでも、たまに見る社長は、何の問題も無く仕事をこなしていた。


一風堂のカステラが無くても、エトワールのチョコレートが無くても、私が入れたコーヒーが無くても、社長の仕事にはなんの影響も無い。


そう思うと、少し胸が痛かった。


私は、その痛みを追い出す様に仕事に打ち込む。


副社長はとにかく外部とのを打ち合わせが多い。


特に今は、うちが運営しているスマホ用ゲームアプリが昔大人気だったアニメと期間限定でコラボすることになっているし、他にも大きな案件をいくつも抱えている副社長。


用意しなければならない書類の数は膨大で、毎日その準備に追われていた。



今まで彼はどうやって一人でやっていたんだだろう?



そう思わずにはいられなかった。




そして、問題が一つ。


それは、太田川さんと他の社員の相性が最悪に悪いということだ。



初めは、何とか歩み寄ろうとしていた太田川さんがったが頑に彼女を拒否する面々に諦めたらしい。


まぁ、太田川さんもかなり上から目線で、みんなが拒否したくなるのもわからないではないが・・・


社内は、ピリピリとした雰囲気に包まれていた。



太田川さんが来て、2週間が経った頃、社内にはもう一つ喜ばしくない変化が現れた。


それは、何だか社長の機嫌が悪いということだ。


いくら社内がピリピリしていようが、平然と仕事をしていた彼だが、ここ最近、様子がおかしい。


ずっと険しい表情のままだし、何より太田川さんが話しかけてもろくに返事もしない。


カステラが食べたいのかな?



何て思ってみたけど、いくら何でもカステラごときであんなにイライラしないだろうと思い直した。


カステラがあれば、すこしは機嫌が直るかもしれなけど、初日に牽制されている身としては、社長に直接頼まれた訳でもないのに差し出がましい事は出来ない。



原因もわからないまま、社長のイライラが社内全体に広がって、どんどん雰囲気は悪くなり、ピリピリ度は日を追うごとに増していた。

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