押してダメでも押しますけど?
4 あり得ない提案
次の月曜日。


出勤してきた社長の機嫌は悪くなかったものの目の下の隈が酷かった。


休日に何をしたらそんな事になるんだと思うほどの隈にみんなの視線も心配そうだ。



そんなことを気に留めるでもなく、社長は淡々と仕事をこなす。


それでも心配で、たまに社長の方を見てしまっていた私は気づいてしまった。



太田川さんへの態度が変だ・・・



今までの社長は、太田川さんに丁寧に対応していたと思う。何と言うか、お客様扱いだった。


でも、今日の社長は違う。


「コーヒーを入れましょうか?」と尋ねる太田川さんに対して、「結構です」と断っていたし、昼食に誘われても仕事を理由に行かなかった。



何かあったのかな?


不思議に思いつつも何だか、胸の奥に何かが引っかかった。


あれ?何が引っかかってんだ?


思考を巡らすが、答えにたどり着かない。



「立川さん」


「のぁ!」



考え事をしている途中に後ろから肩を叩かれ、変な声が出た。


何事かとみんながこっちを見ている。


中には、笑いを堪えている人も居る。


まぁ、変な声が出てしまった自覚はあるから、仕方ない。



それでも顔が熱を帯びるのが分かる。


恥ずかしさを押し殺して振り返ると、副社長が立っていた。


「ごめん・・・何回か呼んだんだけど・・・」


「いえ!こちらの方こそ、すいません!考え事してて・・・」



笑いを堪えて言う副社長に、慌てて弁解した。


「そう?じゃあ、今からS.A.Sに打ち合わせに行くから用意して。」


「はい!」




今は仕事中だ。



さっきの胸の引っかかりは横に押しやって、仕事に集中することにした。





< 21 / 83 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop