押してダメでも押しますけど?
「そ、それはどういう意味ですの?」


「私が言わずとも、太田川さんがご自身で感じていらっしゃるのではありませんか?」


「それは・・・!!」



多分、社長はうちの社員と太田川さんとの関係のことを言っているんだろう。



「それに、お2人は勘違いしてらっしゃいます。」


「「勘違い?」」


「そうです。うちの会社で一番のオタクはおそらくこの俺です。」


「「へ?」」


さっきから、2人の声がよく揃う。


「俺は、見た目と中身のギャップが激しいらしいです。

 過去の彼女には100%『思った感じと違う』と言って振られました。」



「「「・・・・・」」」


あまりの自虐的な告白にみんな何も言えない。



「向こうから告白されたのに、半年もしないうちに振られるんです」




社内に妙な沈黙が流れる。



ただ一人、私の隣にいる副社長だけは笑いを堪えている。


この状況を面白いと思える副社長をすごいと思う。


もちろんあまり良い意味ではない。



「それでも、先週は私の事を受け入れてくれたではありませんか!!」


太田川さんの意味深な発言が沈黙を破った。



ウケイレタ?


社長を見ると、驚いた様に目を丸くしたあと、すぐに眉間に皺を寄せてため息をついた。



「あなたとは一度しっかりとお話した方が良さそうだ。」


そう言って、応接室へと向かう。


扉を開けて振り返った。



「太田川さん、こちらへどうぞ。

 土井さん、申し訳ありませんが、太田川さんと話がありますので・・・」


みんなの視線が土井社長の娘さんに注がれる。



「あ、はい。私、帰ります。」



どこか上の空だった土井社長の娘さんは我に返って答えた。



「申し訳ありません。では、土井社長に宜しくお伝えください。」


「はい。失礼します。」



そう言って、土井社長の娘さんはどこか上の空のまま帰って行った。



そして、社長と太田川さんは応接室に入っていた。
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