押してダメでも押しますけど?
デスクに戻って頼まれていた領収書の処理を黙々とする。


応接室に視線が行きそうになるのを必死で堪えて作業に集中した。




バァーン!!



応接室の扉が凄い勢いで開き、中から怖い顔をした太田川さんが出て来た。



流石のみんなも太田川さんに注目している。



すると、太田川さんと目が合って、睨みつけられた。



え?何??


こちらに歩いて来ようとする太田川さんに思わず身構えてしまう。



「ちょっと、待って下さい。」


応接室から出て来た社長が、太田川さんの腕を掴んだ。


「放して下さい!!」


太田川さんが手を振りほどく。


「あんな貧相な女に私が負けると仰りたいんですか??!!」


私を指差しながら叫んだ。



ヒンソウ・・・



全身ブランド物に包まれた太田川さん。もちろん化粧もばっちり。


それに比べたら、確かに私は地味かもしれない。



だからって、貧相って・・・



密かに傷ついていると、社長がはっきりとした声で言った。



「俺は、胸より脚派だから、関係ありません。」



「え?今のってそういう話?」



誰かのツッコんだ。



みんなが絶対に私の方を向かない様にしてくれているのがわかる。



多分、うっかり私を見てしまうと、無意識に胸へと視線が言ってしまうからだろう。



みんなの気遣いが、むしろ痛い。


どうせ私は寄せて上げてもBですよ。


「わ、私、そういう意味で言ったんじゃありません!」



狼狽える様に、太田川さんが言った。


「え?そうなんですか?

 じゃあ、何が貧相なんですか?」


飄々と言う社長の頭を、今、手の中にある領収書の束で殴りたい。





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