押してダメでも押しますけど?
「私なら、もっと会社の為にできる事があると言う事です!」


「会社の為に出来る事とは?」


「私の父のコネクションを使えば、もっと会社を大きくすることだって可能です!

 それに、もっと優秀な人材を集める事だって・・・・」



「もっと優秀な人材??」



社長の低い声が、太田川さんの言葉を遮った。



「それは、うちの社員がどれだけ優秀かをご存知で、それでもさらに優秀な人材を集められるとおっしゃるんですか?

 何もわからないあなたが、どうしでそんな事が言えるんだ?」


静かに問うその声は、明らかな怒りを滲ませていた。



「そ、それは・・・」



太田川さんの声が震える。



「俺は、自分とこの会社のみんな以外の力で会社を大きくするつもりはない。

 秘書にそんなこと期待していないし、妻になる人にもそんなこと望んだりはしない。」


「・・・・・」



「ここにいる社員は、確かに俺の部下ですが、それ以上に仲間なんです。

 そんな仲間を悪く言う人間を妻にするつもりはない。」



太田川さんは唇を噛み締める。



「出来れば、あなたを傷付けずにお引き取りいただきたかった。

 でも、それはもう無理のようだ。あなたは俺を怒らせすぎた。」




今まで見た事ないほど、冷たい目で太田川さんを見下ろす社長。



みんなはただ黙って成り行きを見守っていた。



「お引き取りください。」


社長は冷たい声でそう言った。



太田川さんは自分のデスクで荷物をまとめると、何も言わずに帰って言った。





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