押してダメでも押しますけど?
「じゃあ、とりあえず乾杯〜」


そう言って、社長が私のグラスに自分のグラスをぶつける。


あの後、コーヒーを飲み終える私を待ってくれた社長が連れて来てくれたのは、おしゃれな居酒屋だった。


普通の居酒屋と違って、ガヤガヤしてなくて、個室があって、ビールがジョッキじゃなくて、細長いグラスに入って出てくるような居酒屋。


「社長って普段、こんなことに来るんですか?」


「ううん。ここは誠司のおすすめ。女の子が好きそうだって。」



なるほど、副社長か。なんか納得。


甘い顔立ちの社長と、クールな顔立ちの副社長なら、一見、社長のほうが女性との交遊関係が広そうだが、実は逆だ。


そうか、副社長は、こんなとこでデートするのか・・・。


一人で納得していると、社長が不満げに言った。



「それより、何で今日、先に帰ったの?」



「え?あぁ、だって社長、仕事してらしたじゃないですか。

 それに、先に帰ってませんよ、外で待ってただけです。」



「あれは、立川さんを待ってたんだよ。」


社長は、不機嫌なままいった。


「そうだったんですか?すいません。お待たせしてしまって。」


申し訳なく思い、謝罪すると、社長は、不満げな顔を緩めた。


「いや、それは良いんだ。立川さんが残業になったのは、俺が無理矢理打ち合わせに連れて行ったからだから・・・」



そうでしたね。



「あの、それで、お話って何ですか?」


もういい時間だ。そろそろ本題に入らないと、明日の仕事に支障をきたしてはいけない。


「あぁ・・・」


思い出した様に呟いた社長が姿勢を正す。


「立川さん」


「はい。」


私も姿勢を正す。


ジッと私を見つめ社長は、本当に綺麗な顔をしている。


普段、こんなにマジマジと社長の顔を見つめた事はないから、不覚にもドキドキしてしまう。


そんな私のドキドキをよそに、社長は言い放った。




「俺のソフレになって?」


「・・・ソフレ?」


「うん。添い寝フレンド」


「・・・・・」



訳がわからない。



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