押してダメでも押しますけど?
まるで、愛の告白をするかのように言う社長に、思わず顔が赤くなった。



「な、なに言ってるんですか?そんなの偶然ですよ・・・」




「確かに、他の人から見れば、うたた寝なんて特別なことじゃないのかもしれない。

 でもね、俺にとっては、とても特別な事なんだよ・・・」


「・・・・」


社長が、テーブルの上に置いてある私の手を握った。



「っ!??!」


驚いて、手をどけようとするが、思いのほか強い力で握られた手が放れる事は無かった。



「立川さん・・・いきなりこんなこと言われて戸惑うとは思うけど、どうか俺のソフレになってくれないか?」


真剣な表情の社長が言う『ソフレ』という単語に違和感があってしょうがない。


「睡眠薬ではダメなんですか?」


「・・・・」


社長の表情が曇り、胸が痛む。



それでも、冷たく聞こえるかも知れないが、ここ最近の社長は、本当に体調が悪そうだった。



本当に効果が得られるかわからない『ソフレ』何かより、病院に行って薬を飲むほうがよっぽど確実に思えた。


「薬ではダメなんだよ。」


「何でですか?」


「実は、ストレスがかかると眠れなくなるのは結構前からなんだ。

 だから、病院に通って薬をもらってたんだけど、ああいうのは耐性があるから、どんどん効かなくなるんだ。」


「・・・・」



「・・・だから、薬ではダメなんだよ。」



社長は私から目をそらした。


「具体的に、ソフレって何をすればいいんですか?」



気がつけばそんな言葉を口にしていた。



「え?!」



社長が、はじかれたようにこっちを見た。



「なってくれるの?ソフレに?」


さっきとはうってかわってキラキラとした瞳をこちらに向けて来る社長に、思わず首を縦に振りそうになるのをグッと堪える。


「まだ、なるなんて言ってませんよ。」


「それでも、話を聞いてもらえるとは思ってなかったから。」



そう言って嬉しそうに笑った。



だから、その顔は反則だって!!
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