押してダメでも押しますけど?
社長の独特の思考回路は、凡人の私には理解できないことが多いので、ベットの件はそれ以上追求しなかった。


「立川さんの部屋はこっちだよ。」


そう言って通された部屋はゲストルームのようだった。


「本当にここ私が使ってもかまわないんですか?」



「え?一緒にリビングで寝る?」


「ありがたく使わせて頂きます。」



「残念。」


そう言って笑う社長を無視して、運んでもらった荷物を解いた。


荷物を片付け終わると、もう夕食の時間だった。



「せっかくだし、引っ越し蕎麦でも食べよう」


そう言った社長の提案で出前を取った。



当たり前のようにお金を払ってくれた社長にお礼を言って蕎麦を食べる。


蕎麦を食べながら、私の意識はこの後のことで一杯になり始めた。



例えば、風呂上がりのブラはどうするか・・・いや、これはしておくべきだな。


じゃあ、化粧はどうする?スッピンで眉毛がなくなるタイプではないけど、流石に薄くファンデーションくらい塗っておくべきだろうか。



うーん・・・悩むな。


彼氏でも、家族でもない社長にどう接するべきなのだろう?



今更ながらに社長との同居について細かいところまで考えていなかった自分に気づいて呆れた。



はぁーとため息を付いていると、社長に呼ばれた。


「立川さん!」


「はい!」


「何度も呼んだんだけど?」


「すいません、考え事してました。」


気づけば、社長のお皿は空になっていた。



「この後のことだけど、お風呂に入った後は、ゆっくりDVDでも見るのはどうだろう?」


「DVDですか?」


「うん。最初の夜だし、何かあったほうが良いかなと思って用意したんだけど・・・」


「ありがとうございます。」



社長の気遣いが嬉しくて、お礼を言うと、社長も満足そうに頷いた。



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