押してダメでも押しますけど?
社長がシャワーに行っている間に、食事の片付けをして、その後、自分もシャワーを浴びる。


「へー立川さんのスッピンってそんな顔なんだ。」



その言葉に固まった。



アホウな私は、さっき悩んでいたにも関わらず、すっかり忘れて社長にスッピンを晒してしまう。


「す、すいません。ちょっと化粧してきますから!」



そう言って自分の部屋に逃げようとすると、社長に腕を掴まれる。



「俺は、気にしないよ?」


「いやいや、社長が気にしなくても、私が気にしますから!」


「でも、2週間ここで暮らすんだよ?そんな気を使ったら疲れちゃうよ。」



それでも、最初の夜くらいは取り繕いたいと思うのが女心ではなかろうか。


手を放さない社長を睨むと、社長はにっこりと笑って爆弾を落として来た。



「立川さんのスッピン可愛い。」



「なっ?!」



「はいはーい。化粧なんてしなくていいから、こっち来て一緒にDVD見ようね〜」



狼狽える私を、ズルズルとソファーまで引っ張って行く社長。



「ここに座って?」



強引に座らされて、大人しくなると、社長は満足そうに笑って、DVDを見る準備を始めた。



準備を終えた社長が私の隣に座る。



ち、近い。


社長と私の間に隙間はない。



この距離感はどうしたものかと社長を見るも、社長はテレビを見ていて、こっちを向く気配はない。


何の意味もないのに、わざわざ座り直すのも変な気がして、私もテレビに集中することにした。


よく知る映画会社のロゴの後に、軽快な音楽とともに画面に打つし出されたのは・・・



『超獣戦隊ジュウレンジャー』




思わず社長を見るも、社長はテレビに釘付けの様子。





・・・・マジか。



私の戸惑いとは真逆の軽快な音楽が流れていた。


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