押してダメでも押しますけど?
ゆっくりとと奈々の方を見る。


何だか、自分の首なのに思う様に動かせない。


「知ッテタ?奈々ガ?社長ガ私ヲ好キナコトヲ??」


「何で、片言なのよ。

 話聞いてれば、今時、小学生にも分かりそうなくらい分かり易かったわよ。」



「私が小学生以下だって言いたいの?」



「だって、そうじゃない?

 いくら、私が天才だからって、チョコ一つで大人の男がホイホイ仕事するわけないじゃない。
 その気になれば、自分でだって買いにこれるのに。」


「それは・・・・」


「決定的なのは、副社長の言葉ね。『社長は大人の男で、足りないのは、チョコでもカステラでもない。』だったっけ?」


「え〜そんなことまで言われたのに、気づかなかったんですかぁ?

 それは、ありえな〜い。」


「・・・・・」



初対面のはずなのに、息ぴったりの毒舌コンビに好き放題言われてぐうの音も出ない。



「二人だって、私の立場だったら、絶対に気づかないよ。」


「気づくわよ。」「気づきますよ。」



二人同時に否定されたて、今度はりっちゃんに同意を求める。



「りっちゃんなら気づかないよね?ね?」


「・・・社長は、かなり分かり易かったですからね・・・」



遠回しに否定されてしまった。


ショックを受ける私を見て奈々が笑っている。



「もういいもん。」


「拗ねないの。ほら、飲んで。」



不貞腐れモードに入った私を奈々が宥める。


差し出されたビールを一気に飲み干したが、酔える気配は一切なかった。


いっそ、酔っぱらって勢いで帰りたかったが、それも叶わず、週の始めということで9時に解散となった。


気分をリフレッシュさせるはずが、衝撃の事実に何だか逆に疲れてしまった。



私は、重い足取りで昨日から借りの住処となった社長の家に向った。
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