押してダメでも押しますけど?
まだ、ぶつぶつと言っている社長。


「今までの彼女にもそんなこと言ってたんですか?」


「え?言ってないよ。」


「・・・・」



じゃあ、何で私にはそんなんなんだ。


「今までは、相手に告白されて、付き合ってたから、自分からアプローチしたことはない。」


私の心が読めたのか、説明してくれた社長の言葉に聞き覚えがあった。


たしか・・・


「相手に告白されたのに、最後は振られるという毎度同じパターンだ。」


・・・そうだった。


「何か、すいません。」


思わず謝った。


「謝らないでよ。もうずいぶん昔の事だし。」


「そうなんですか?」


「うん、最後に彼女が居たのはまだ、学生のころだったからね。」


「そうなんですね。」


「うん。最後の彼女に別れ際に言われたことが結構グサッと刺さってね。それから、恋愛はもういいかななんて思ったりして。」


そう言って、社長は残りのオムライスを頬張った。


『何て言われたんですか?』とは聞けなかった。聞けるような関係ではない。


それでも、すこし陰った社長の表情を見て、胸が痛む。



「その方が何を言ったのかはわかりませんが・・・」


社長が顔を上げた。


社長と目が合う。



「社長は素敵ですよ。」


「へ?」


「あ、いや、人間としてってことですよ!!

 会社のみんなだって、社長の事、好きですよ?」


「それって、遠回しの告白?」


「違います!!」


「じゃあ、人間として好きで、異性として好きになるまでもうちょっとだから、どんどん押してくださいっていう意味?」


「それも違います!!」


ムキになって否定すると、社長は笑いながら『分かってるよ』と言った。


そして、私の顔を見て、笑顔で言った。




「俺、やっぱり立川さんのこと好きだわ。」


「!!」



そんな社長に不覚にも胸がキュンとなる。




ずるいです、社長。



そういうのを口説いてるって言うんです。
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