押してダメでも押しますけど?
「社長、今日はコレを見ませんか?」


お風呂上がりのまったりタイム。私は、1枚のDVDを差し出した。


社長に任せていたら、多分今日もヒーローショーになってしまう。



「ん?『魔法戦士リノア』?

 あぁ、今度S.A.Sとコラボするやつか。」


「はい。今日、ここに戻ってくる途中のレンタルショップで見つけて。
 
 見た事ありますか?」


「いや、何となく話は知ってるけど、見たことはないな。

 見てみようか。」


私は頷いて、DVDをプレイヤーにセットした。


「あかりは、これが好きなんだろ?」


「はい。」


「誠司が言ってた。

 S.A.Sの担当者といつも大盛り上がりで打ち合わせしてるって。」


「副社長、そんなこと言ってたんですか!」



以外に口が軽いな副社長!



「いいじゃないか別に。仕事が楽しいのは良い事だ。」


「まぁ、そうですけど・・・」


「それより、ほら、早くこっち来いよ。始まるぞ。」



そう言って自分の座っている隣をポフポフと叩く。



そこに座れという意味ですか?



無言で問いかけると、社長も無言でポフポフし続けた。



ポフポフポフポフポフポフポフ・・・・



「手が疲れる。早く、ここ座って。」



仕方がないので、社長の隣に座った。


すると、社長がわずかな隙間をつめて来る。



「狭いですよ。」


睨みつけて抗議するも、社長は無視。


すると、テレビから懐かしいオープニングが聞こえて来たので社長から視線を外した。



それからは社長の存在もすっかり忘れDVDに夢中になった。


途中、社長が『飲み物のいるか?』とか『何か食べるか?』とか聞いてくれたような気がするけど、生返事を返したと思う。



結局DVDの1巻に収録されている4話を見終わるまで席を立つ事はなかった。


< 59 / 83 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop