押してダメでも押しますけど?
さっきの生返事はさすがに失礼だったと思い、2本目のDVDを見ながら、たまに社長の方を見た。


すると、私の意図を読み取った社長は、クスクスと笑った。。


「俺のことは気にしなくていいから、ちゃんと見ときなよ。」


そう言って、私の頭をポンポンとする社長。


「・・・ありがとうございます。」


私は社長の好意に甘え、DVDに意識を向けた。



ちゃんと私の事見ててくれて、さりげない気遣いを見せてくれる社長って結構素敵だと思う。



三大欲求だの何だのと、変なことばかり言わなかったら、きっと私は・・・



あれ?私は・・・・なんだ?



後一歩でとんでもない結論に達しそうな私は、慌てて首を左右に振った。



「うぉっ?どうした?」


至近距離にいる私が、いきなり首を振ったので、社長を驚かせてしまったようだ。


「あ、すいません。」



慌てて謝ると、社長は怪訝な顔でこちらを見ている。


「いや、大丈夫だけど。あかりは?大丈夫なのか?」


「はい。私は何の問題もありません。」


「まぁ、それならいいけど。」



そう言って社長はDVDに視線を戻した。



私も慌ててDVDに視線を戻す。



でも、さっきのことが頭から離れない。



あそこで考えを止めなかったら、私はいったいどんな結論に至っていたのだろう?


知りたいような気もするし、心の中で、それを受け止める自信なくて、無意識に考えない様にしているのも事実だ。



悶々とした気持ちのまま視線だけはDVDに集中させた。



結局2本目のDVの内容はさっぱり頭に入っていなかった。
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