押してダメでも押しますけど？

いつもは気にならない沈黙が今日は気まずい。


社長が触っても良いって言ったから触ったのに何がいけなかったんだろう？



社長の方を見ない様に意識して、車の外を眺める。



「あかり、すまいな。お茶とって。」


「あ、はい。」



社長に頼まれ、ペットボトルの蓋を取って社長に渡す。


「サンキュー。」


「いえ。」



「・・・・何か話題ないか？」


突然言われても困るが、きっと社長も、この沈黙が心地悪かったんだろう。



「うーん・・・」



沈黙は嫌なので、私も何かないか考える。



いつもは何気ないことで盛り上がれるのに、こんな時に限って思いつかないのはなんでだろう？


「あっ」


必死に考える私に、ある事が頭に浮かんだ。



「何だ？」


「いや、あの何でもありません。」



確かに浮かんだことには浮かんだのだが、話題というか何と言うか・・・前にちょっと気になった事だった。



「気になるだろ？言ってよ。」



「でも・・・」



社長に促されても躊躇する。


本能が、口にする事を拒んでいるのだ。



「でも何？いいから言ってみ？」



まぁ、確かに、私が社長の立場だったら気になると思う。


口に出してしまった私が悪いんだし、腹をくくって聞いてみる事にした。



「前に、太田川さんが『社長に受け入れてもらった』って言ったじゃないですか？

　あれってどう言う意味だったんですか？」



「・・・・・」



・・・・何も言ってくれない。



やっぱり聞いてはいけなかったんだろうかと不安になり社長を見ると、社長は何故だかちょっと嬉しそうだった。


「気になるか？」



不敵に笑う社長が問う。


「いえ、全然。」


「何だよ。素直じゃないな。」


「本当に全然きになってませんから。」



やっぱり聞くんじゃなかった。



「まぁ、そう遠慮しないで。」



そう言って社長はその事について話始めた。