押してダメでも押しますけど?
社長が、私のかかとを持って丁寧に拭いてくれる。


恥ずかしい事この上ない。



「社長、自分で拭けますから。恥ずかしいんです。」



「大丈夫。俺が恥ずかしがるあかりを見たいだけだから気にしないで。」



思わず、拭かれていない方の足で社長を蹴りそうになったのをグッと堪える。



「ホント、自分で拭けますから、タオル返して下さい。」



「だめ、あかりだって、さっき俺の手触ったじゃん。

 俺だって、あかりの足触りたい。」



「あれは、社長が触っても良いって言ったんじゃないですか!

 あ、それとも、初めから、交換条件を出そうと思ってたんですか?!」


「失礼な!人聞きの悪い。それじゃ、計画性のある変態じゃないか。

 俺は、もっと心が純粋な変態だ。」



「・・・・」



純粋な変態って何なんだ。



何だか、抵抗するのがバカらしくなって、社長にされるがままにする。



社長はタオルで綺麗に拭いてくた後、私のバックとサンダルを取りに行ってくれた。



そして、サンダルまで履かしてくれる。



見た目だけは王子様のような社長が目の前に跪いてサンダルを履かしてくれると、自分がお姫様になったような感覚になった。



「ありがとうございます。」


「ん。」



社長が私の隣に腰を下ろす。



「しかし、楽しそうだったな。海好きなのか?」


「そうですね。昔はよく来てたんですけど、最近は来てませんでしたね。

 社長も、久しぶりですか?」



「俺は・・・2回目。」



「2回目?!」


「あぁ。小さい頃は、両親が仕事で忙しくて連れて行ってもらって記憶なんてないしな。
 
 初めて行ったのが高校の時だったかな。誠司達と行ったら、逆ナンパが凄くて、鬱陶しいだけだった。」



「・・・あぁ。」



逆ナンパされて嫌そうな社長の顔が目に浮かぶ。



そんなことより、今、サラッと寂しいこと言った気がする。



「まぁ、今日は楽しかったけどな。」



「え?何にもしてないじゃないですか。」


「あかりの一緒なら、どこでも楽しいってことだよ。」



「・・・・」



「ちょっと手、出してみ?」




私が手を出すと、その上に小さなピンクの貝殻が置かれる。



「さっき見つけた。綺麗だろ?あかりにやるよ。」


「・・・社長って、以外にロマンチストだったんですね。」



「知らなかったのか?俺は、ロマンチストな変態なんだ。」



「なんですかそれ?」




そう言って笑うから、私もつられて笑った。
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