押してダメでも押しますけど?
ラーメン屋は近かったからすぐに社長のマンションに着いた。


「疲れたろ?あかり、先に風呂に行っておいで。」


「いえ、私は大丈夫ですから、社長が先にどうぞ。」



社長はずっと車を運転していてくれたわけだし、社長の方がよっぽど疲れてると思う。


「でも、あかり、今朝、体調悪いって言ってなかったか?

 散々連れ回した後で説得力ないかも知れないが、やっぱり今日は休んだ方が良い。」



「・・・はい。」



罪悪感は、あったが、これ以上抵抗しても、余計に社長に気を使わせるだけなので、大人しく従っておく事にした。



海にいったせいか、髪がベタベタしていたので、シャワーを浴びるとすっきりした。



「お先でした。」


リビングに戻ると社長がパソコンに向っていた。



また、仕事してる・・・

社長ってワーカホリック?



「社長?」


改めて声をかけると、社長がこちらを振り向いた。



「お先でした。」


「あぁ、ごゆっくりどうぞ。」


「冷たいお茶飲もうと思うんですけど、社長もいかがですか?」


「あぁ。欲しいな。」



キッチンに行って、お茶を2つ用意して戻る。


社長にお茶を手渡した。



「ありがとう。」


「いえ。今日は社長にずっと運転してもらってましたし、これくらいは。」



「気にしないでいいのに。

 それより、疲れたんじゃない?今日は添い寝はいいからさ、ゆっくり休みなよ。」



「え?でも・・・」



「俺のことは気にしないで。

 明日も仕事だし・・・な?」



チラッとパソコンに目をやると、そこには私には到底理解できない、数字と英語の羅列があった。



仕事がしたいのかな・・・



そうなると私はむしろ邪魔と言う事になる。



「わかりました。じゃあ、今日はお先に休ませてもらいますね。」


「うん。おやすみ。」


「おやすみなさい。」




自分の寝室に戻ってベットにもぐり込む。



昼まで寝ていた私は、まだ9時を過ぎたばかりのこの時間に眠いわけもなく、ただベットに横たわっただけだ。



「はぁー」


無意識にため息がでる。


ここに来て、社長の寝顔を見ないのは初めてで、何だか物足りなく思う。



それに、『今日はいい』と言われ傷ついている自分がいる。


それはここにいる役割を果たせなかったからなのか、それとも・・・



そこまで考えて、もう一度ため息がでた。





< 77 / 83 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop