にんじんは甘い、ピーマンは苦い
「おい、夏菜…」

翠の肩の奥に見えたお兄ちゃんは、随分と弱々しく見えた

隣の紀莉子さんは、それを心配そうに眺める

そして、私を心配そうに見つめるのは、保健室の先生で

あぁ、夢の中の人達だと思った

「…ヒロくんは?」

そう、ヒロくんがいない

ここにはヒロくんがいない

「お前、思い出したのか?!」

兄は信じられないとでも言うような顔で

紀莉子さんは、その場に泣き崩れた

翠の抱きしめる強さが、少しだけ強くなったような気がした
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