ラヴ・ラヴァーズ・キス
第2章 「ワインに毒」
大きな一面の窓ガラスに映る、自分の姿が目に入って、

まとめた髪がひとすじ、首筋に垂れているのに気がついた。

アップなんか、ほんとに久しぶりだ。

それに、用意されていたこのドレス・・・

あんまりにも身体にフィットし過ぎてて、ちょっとも気が抜けない。

けど、吸い込まれるようなターコイズブルーに、

ヒラヒラした裾が熱帯魚みたいに広がって・・・すっごく綺麗だ。

窓ガラスを鏡代わりに、垂れた髪を指に絡ませてまとめた髪に戻そうと試みる。

けど、美容師さんのやってくれたことだもん。

素人の私には、やっぱり難しい。

「瑞葉ぁ?」

急に名前を呼ばれて、絡ませた髪を解いて振り返った。

母と、傍らには写真で見た悠人さん・・・新しい父の姿を見つけた。

ああ・・・

なるほどね。

親のくせして娘に惚気るだけある。。。

沢山の恋人がいたのだろう悠人さんは、ダンディで

私の目にも、どことなく色香を感じさせる雰囲気がある。

「やぁ、はじめまして。君が瑞葉ちゃんだね。」

義父は、その整った顔をくしゃっと綻ばせて、優しい声で言った。

「逢うのを楽しみにしていたよ、僕は悠人、よろしくね。」

「あ、はい・・・どうも。」

差し出された右手に、一瞬たじろいだけど

ああ、握手か、とすぐに思い返して手を伸ばした。
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