ラヴ・ラヴァーズ・キス
「どうにも不躾ですまないね。」

「あ、いや・・・えっと、いえ。」

ああ、気の利いた言葉が出て来ない。

母よ、あなたはこのお子さんたちのことを本当に知ってたのか??

私は、ちらりと横目で母の顔を見遣った。

微笑んでいる―、けど、娘の私には分かる。

これは、ええ?マジで?何、どういうこと?と、内心パニクってる時の顔だ。

やっぱりか!

やっぱり知らなかったか!

「翔、日向、ふたりも挨拶しなさい。」

義父は、あまり触れたくないふたりの息子さんたちに命じた。

けど、お2人とも返事はなしで、両名ともに顔を伏せてスマホをいじっている。

「ふたりともその格好は何だ、ちゃんとした格好で来なさいと言っただろう。」

あ、いや・・・

お義父さん、格好以前の問題です。

「兄貴はともかく、これは正装だろ?」

「またそういう屁理屈を言って・・・。」

あ、なるほどですね。

お義父さんは、お子さんたちに弱いんですね?

親ばかって奴ですね?

「ほら、ちゃんと挨拶しなさい。」

「へぇへぇ、よろしくね、お姉さま。」

「・・・よろしく・・・。」

えええっと・・・

これ、だいぶん不敬罪じゃない?

ちょっとイラついてきたけど・・・どうする?
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